そんな大富豪を楽しむ俺に、
別のグループで楽しむだっちんとマチコが、
こちらへ来るように手招きしていた。
まださっきまでの笑いが残る中、
俺はお気に入りの濱ちゃんを無理矢理連れていき、
グループに混ぜ込んだ。
マチコとだっちんの側にはまだ絡んだことのないクラスの男子がいて、
俺の方をじーっと見ている。
こいつ、
さっきの大根役者!と心の中で笑っているのかもしれない。
もしそうだとしたら、
挽回しないと、
面白くない奴だと勘違いされても困るしね。
俺は彼と仲良くなった方が身のためだと判断し、
作り笑顔が悟られないよう満面の笑みで話しかける。
「君、誰ー?」
朗らかに俺は声をかける。
だけど、どことなく不機嫌そう。
あれ?
聞こえていないのかな、
返事が一向に返ってこない。
俺は君に向かって言ったんだけどな。
俺はまだじーっと俺の方を見る彼を不気味がった。
「誰ーじゃなく、まず自分から名乗ったら?」
時代劇や不良漫画でもあるまいし、
彼の返答に、
呆気に取られた。
佇まいといい、
人を見下しているような目付きといい、
まるで今から殴り合いの喧嘩でもおっ始めるつもりか。
「えー、あー、俺?」
震える声、
表情は引き攣り、
足は関節のない人形みたいに立っている。
「そうだよ。自己紹介してくれよ、面白く」
少しだけ唇をプルプルと震わせ、
笑わないようにこの場を凌ごうとしている彼を俺は不思議がった。
彼だけじゃない、
周りにいただっちんとマチコまでもが俺に表情を見られないよう視界から上手く外れている。
自己紹介?
雰囲気から漂う空気感、
これはひょっとして、
俺を試しているんだな。
この数秒間という短い時間の中で、
お笑い芸人みたいに面白く自己紹介しろだと?
期待しかしてない目線でこっちを見るな、
無駄にハードルを上げるな、
こんな無茶振りで一笑い掻っ攫ってこいと?
とてつもないプレッシャーがかかるも、
俺はない頭をフル回転させた。


