「すまない、シンデレラ。僕は君を愛すことができない。なぜなら、僕は……あぁなんか違うなぁ」
少しずつだが進歩している俺の成長スピードは侮れない。
マイマイを納得させたい一心で芝居に熱が入る俺は、
いつしか完璧さを求めるようになっていた。
そんな俺が演技に夢中になっていることも知らず、
誰かが教室に近づき、芝居風景を眺める。
「僕は男が好きなんだぁ!!あぁァ〜くそ!男が好きで好きで堪らない。何で男として生まれてしまったんだ…………」
我ながら完璧に決まった。
これならマイマイも絶対に納得してくれるはず。
ふと振り向いた瞬間、
顔を引き攣り固まるマチコと目が合っていた。
「えッ?ェええェ〜〜〜〜」
叫びながら走り去るマチコを見て、
不思議がった。
芝居の邪魔だなって思うだけで、
気にも留めない。
これも全部、
役に入り込んでしまっているせいなのか?
俺はひたすら「男が好きだ」と連呼した。
役に入り込みすぎたせいか、
休憩終わり、
マイマイに芝居を見せたら物凄くドン引きされた。
自分が構成して作ったセリフなくせに、
俺の芝居の上達ぶりを気色悪がった。
俺のドン引きされた会心の芝居は予想以上の出来だったのだろう、
ボーイズラブ風な劇は、
急遽、普通の清楚系に練り直される。
あれだけ必死になって芝居を頑張ったのに、
ヤギちゃんに王子役を剥奪され、
俺は通りすがった外国人という意味不明な役に抜擢された。
俺のセリフは片言で「大根おろし、目に染みるぅ〜」と言うだけ。
たぶん、二度と使わないし、
聞くこともないだろう。
俺の頑張りは虚しく、
シンデレラ劇の練習は急ピッチで進まれた。


