劇の稽古を完全非公開にして、
本番まで劇の内容が他の人に知られないように、
俺たちは違う教室へと移動した。
「すまない、シンデレラ。僕は君を愛すことができない。なぜなら、僕は男が好きだから!」
芝居するのは初めて、
軽い気持ちで演じる俺は、
誰が見ても分かるほどの棒読み。
それを見て、
構成作家兼監督のマイマイは態度を豹変させ、
何度も何度もやり直させた。
「棒読みやめェ〜、しなすよ?もっと感情を込めろってさぁ。この下手くそ!!」
もう何回やり直させられたか分からない。
でも、
沖縄弁の『しなすよ?』と言われた回数だけはハッキリと覚えてる。
なかなか役に入り込めない俺は、
本当に男が好きなわけでもないし、
王子様のようなタイプでもない。
感情を込めろと言われても、
その役の気持ちになって演じることなんてできやしないんだ。
構成作家兼監督のマイマイから直接、
ご指導ご鞭撻を頂く俺は、
弱音なんて一切吐き出さすことはしない。
むしろ、
やる気だけは人一倍あるから、
少しずつ役に染まってきた。
「よし、皆頑張ったさー、ちょっとだけ休憩入るばー?」
「休憩休憩、疲れたぁ」
メンバーが練習室から出て行くのを見ては、
俺もその流れで休憩に入ろうとする。
だけど、
マイマイはそれを許さない。
「何してるばー?りょうちんは一人で練習しとけさぁ!」
スパルタ鬼監督め、
今度ゴーヤで痛めつけてやる。
教室に一人だけ残された俺は、
マイマイに対する怒りも込めながら、役に入り込んだ。


