そんなB班にだっちんが大きな声で俺のところへ躙り寄って来た。
「へい、りょうちん!紹介するよ、こいつマチコ」
だっちんがヤンキー君の肩に躊躇なく手を回し、
意気揚々と馴れ馴れしくしているのを見て、
驚きを隠せないでいた。
あの短時間でいったい、
何があって、
どうやって手懐けたのか。
俺は目の前にいるヤンキー君と目を合わせれそうにないから、
胴体に向かって睨めっこしている。
笑えない状況に戸惑いながらも、
だっちんが先ほど教えてくれた『マチコ』というあだ名を冷静になって、
よく考え直してみると、
面白すぎてクスッと笑ってしまった。
「いや、その顔でマチコって!面白すぎやん」
ネーミングセンス抜群のあだ名に俺は白旗を振り、
エセ関西弁と一緒に散って出た唾がまた笑いを生む。
何だかヤンキーという概念だけに執われすぎていたようで、
マチコの人柄の良さに気づいた時には、
今までマチコに抱いていた恐怖心が取り除かれていた。
「お前、近いなッ」
だっちんと同様に、
馴れ馴れしく肩を組んで反応を伺うと、
マチコが嫌そうな顔をしている。
これはマズイと、
いち早く察知した俺は、
次のプランを即座に頭の中で組み立て、
それを実行するまで。
まずは下手にでて、
上手いこと距離を縮めてみせよう。
高圧的な態度を取ったのは、
俺の良心が許せなかった。
両手をすりすりしながら、
セールスマンのようになっちゃった俺は、マチコにごまをする姑息な行為に走っていた。
先程まで嫌な顔を見せていたマチコも、
今では、
お得意様のようになっている。
状況と人で対応を変えてみせる俺は、
もはやベテランの域に達している。テレビで一度見ただけで、
こうして出来たのだから、
我ながら花丸をあげてもいいだろう。
「お前、おもろいな」
ほら、
こうやってマチコの心を掴んだ俺は、
会心のガッツポーズを心の中で決め、
勝利の余韻に浸っている。
どことなしに距離を縮め、
もう友達だ、
そう完全に思い込んだ俺はマチコの肩にそっと手をまた回した。
「お前、近いなッ」
おっと、まだ早かったみたいだ。
驚きとは別に悲しみが混じった「え?何でだっちんはいいの?」は、
黒板からギィーと響き渡る不快な音と一緒に掻き消されていく。


