温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~

「験担ぎ?」
「ええ、かれこれ15年くらいかしらね」
「そんなに続けてるんですか。でも、どうしてチョコレートサンデー?」

 受け取ったがま口を帯の間に挟むと、女将は少し照れたような表情を浮かべた。

「一鷹が中学の頃なのだけど、あの子もそれなりに反抗期があったのよ」
「ええっ、一鷹さんがですか!?」
「今じゃ想像できないわよね。口は聞いてくれないし、高校は寮に入るとか言い出してね」

 懐かしさと寂しさが混ざったような横顔を見ながら、暖房で暖まったコートに袖を通した。

「そんな一鷹が、高校へ上がった年の冬に、誕生日の夜に買ってきたのよ」
「チョコレートサンデーを?」
「どうせ母さんは父さんからなんでも買ってもらえるだろう。だけど冬に、コンビニのアイスなんて買って来ないだろう。ですって」

 楽しそうに思い出を教えてくれた女将が「可愛いでしょ」といったのに、つい頷いてしまった。
 一鷹さんにも子ども時代があったんだな。いや、あるのなんて当たり前のことなんだけど。

「思い出の味なんですね。じゃあ、急いで買ってきます!」