同じクラスでも凡人のわたしにとって才能のある我妻くんはまるで別世界の住人のように遠い人だ。
「あ、我妻くんこそ怪我してない?」
わたしの不注意のせいで我妻くんに怪我を負わせたなんてことになったら大問題だ。
頭の中には【MEBIUS活動休止】の言葉と共に頭を抱えるメンバーとショックを受けるファンの姿が浮かぶ。
⋯⋯せ、責任を取らないと。
で、でも、どうやって? わたしが我妻くんのためにできることなんて雑用係ぐらいだよ⋯⋯!
「あ、あの⋯⋯ひとまず保健室に」
「保健室? 何言ってんだ。このくらいで怪我なんかするかよ」
「え⋯⋯本当? 本当にどこも痛くない?」
「だから平気だって言ってんだろ」
我妻くんの一言にほっと胸をなでおろす。
「よ、よかった」
ほんっとーによかった!
そうだお礼!
まだ言ってなかった。
我妻くんが受け止めてくれなかったら、運動神経の悪いわたしは今ごろ骨の一本や二本折っていたかもしれない。
そんなことになったら執筆活動に支障が出る。



