「奏人のラブソングは気持ちがこもってないんだよ。それじゃあ新は⋯⋯」

千里と目が合って首を大きく横に振る。

「だよね」

「おい! やる前から諦めるなよ」

「新は恋多き人間だけど、圧倒的に語彙力が足りないから」

「くっ⋯⋯千里、わかってるからそれ以上は言うな。本当、俺って何もできねー」

しゃがみ込んで頭を抱える新。

「そんなことねーよ。新は他の面でMEBIUSを支えてくれてるだろ」

「そうそう。奏人の言うとおりだよ」

SNSの運営やライブへの出演交渉は全て新が担当してくれている。

MEBIUSがもっと大きくなるためには何が必要なのか。

それを知るために、ご意見BOXを設置しようと提案してくれたのも新だ。

「奏人~! 千里~! 俺、一生お前らについていくから」

一瞬にして元気を取り戻した新はドラムスティックを天高く掲げた。

「切り替えが早い奴だな」

「そこも新の良いところだよ」

千里の言うとおりだ。

自分で言うのもなんだけど、MEBIUSはうまくバランスのとれたグループだと思う。

だからこそ、この先のことを考えると慎重になってしまうんだ。