「SNSだけじゃなくてライブハウスに置かせてもらってるご意見BOXにも似たような意見が集まってるんだよ」

新はどこからか出してきた紙の束をひらひらと揺らす。

千里はその紙の束を受け取ると順番に目を通していった。

「どれどれ⋯⋯確かに俺たちにラブソングを歌ってほしいって意見が多いね。あとは、【連絡先教えてください♡】って感じが七割」

BOXには【〇〇くんへ♡】と個人に向けたメッセージが入っていることも多々ある。

ご意見BOXだって言ってんのに。

「やっぱり俺たちにもラブソングが必要なんだって! なぁ奏人、千里」

「まあな」

ラブソングを求められていることには薄々気づいていた。

「ラブソングな⋯⋯。千里は? 書けそうか?」

「前に配信で俺が書いたラブソングは全く共感できないって言われたの覚えてない? そういう奏人はどうなの?」

「俺が書いたものは薄っぺらいんだろ?」

俺と千里も何度かラブソングに挑戦したことはある。

でも、特殊な恋愛観を持つ千里と恋愛なんてしたこともない俺が作った曲はとても聴かせられるレベルのものではなかった。