花は夜に咲く

見上げた先に立っていたのは――


氷月 彗だった。


夜の光を背負って、その顔が半分だけ影に沈んでいる。


冷たいのに、どこか優しい目。


「……間に合った」


低い声。


それだけで、膝から力が抜けた。


何か言おうと口を開いたけれど、声が出なかった。


彗がゆっくりとこちらに歩み寄る。


風が動くたび、彼の黒いコートが静かに揺れた。


その姿は――まるで、夜そのものだった。