その宝石の周りには、結界を張っているようにしめ縄がぐるりと張られている。紙垂（しで）が旅館の空調のせいでひらひらと揺れていた。

（触りたい。触らなきゃ）

そんな気持ちが強くなった。僕はそっと手を伸ばし、血のように赤い宝石に触れようとした。刹那。誰かに手を強く掴まれる。その瞬間、ぼんやりしていた頭が一気に覚醒した。

「と、透……」

僕の手を掴んだのは透だった。透は心配そうに僕を見ている。

「星川くん、このオブジェには触っちゃダメなんだよ。ぼんやりしてる様子だけど大丈夫？」

「だ、大丈夫！寝ぼけてぼんやりしてたみたい。ごめんね」

僕はそう言い、足早に透から離れる。一体、僕は何をしようとしてたんだろう？

それから一時間後、夕食の時間が迫ってきたので僕たちは部屋を出た。

「夕ご飯、どんなメニューが出てくるのかな。楽しみ！」

晴輝がお腹をさすりながら言う。相当お腹が空いてるみたいだ。まあ僕もだけど。

「やっぱり海が近いから海鮮じゃないかな」