旅館の中に入ると、宝来館のオーナーが「皆様、お待ちしておりました」とにこやかに出迎えてくれた。痩せていて、グレーヘアの男性だ。

「私はこの旅館のオーナーです。皆さんをお部屋にご案内する前に、お願い事があるので聞いてください。あちらに宝石のオブジェが置かれているのが見えますか？」

オーナーが手で示した先には、大きな紫色の宝石のオブジェが置かれている。宝石の種類はわからないけど、高そう……。

「このようなオブジェがこの宝来館には数多くあります。大変高価なものですので、決して手を触れないでください。皆さんが泊まる四階にもオブジェがございます。写真撮影は構いませんが、触るのはご遠慮ください」

オーナーはそう言った後、僕たちを部屋に案内してくれた。部屋に真っ先に入った晴輝が「わぁ……！」と声を上げる。

部屋は和洋室で部屋の右側には二つベッドが並び、左側には長テーブルと畳が広がっている。入って真正面に大きな窓が見え、そこからは美しい海が見えていた。