バスが高速道路を降りると、クラスメートたちが一斉に「海だ！！」と叫んだ。目の前にはコバルトブルーの美しい海が広がっている。

僕、星川瑠依もクラスメートと同じように綺麗な海を見つめていた。海には前世の僕は来たことがなかったし、今世では小学生の時以来かもしれない。

僕が海を見つめていると、隣から制服の袖を掴まれた。座席を倒して寝ていた双子の兄弟の静瑠が、不機嫌そうに僕を見ている。

『あいつら、たかが海で騒ぎすぎだろ』

そう言いたげな目を静瑠はしているが、その言葉を口にすればこの場の空気は凍り付くだろう。僕は、「言っちゃダメだよ」と念を込めて首を横に振る。

「もうすぐ旅館に到着だね」

僕の後ろに座っている紫乃があくびをしながら言う。眠そうだ。朝からはしゃぎ過ぎたもんね。

「紫乃、そんなに眠そうで夜まで持つのか？夜は怪談会があるんだろ？」

紫乃の隣に座っている菫が心配そうに訊ねる。紫乃はもう一度あくびをした後、「部屋で休んだから怪談会までには回復するでしょ」と返した。