「結香はどの香りが気に入ったんだ?」
「そうですね……やっぱり私は、金木犀の香りのものが一番好きです」
「ふっ、だと思ったよ」
金木犀が咲き誇る秋は、二人が出会った季節だ。そして再会したのもその時期だった。
元々好きな香りではあったが、結香にとってはより特別な花になっている。
「確か金木犀の花言葉は、謙虚、気高い人、真実、誘惑だったかな」
「へぇ、そうなんですか? 何だか優雅さんにぴったりな花言葉ですね」
「そうかな? ……あぁ、それから初恋、なんて意味もあるらしいからね。君と出会えた俺には、確かに合っているかもしれないな」
優雅は繋がれた手にきゅっと力を込めながら微笑む。
――つまり優雅にとっての初恋は、結香だということだ。
初めて知った事実に結香は驚きながらも、胸に広がる嬉しさに頬を緩ませて、同じく繋がれた手に力を込めた。



