「あぁ、そうだ。君に似合うと思って調合したものだよ。……引いたか?」
「引いたって、どうしてですか?」
「……彼氏でもない男から手作りの香水をプレゼントされても、嬉しくはないだろう?」
「そんなことないです。嬉しいですよ、すごく。……大切に使いますから、これ、頂いてもいいですか?」
「……あぁ。君のために用意したものだ。受け取ってもらえるなら、俺も嬉しいよ」
心から嬉しそうに笑っている結香の表情を見て、優雅はその瞳に安堵の色を滲ませる。
「それにしても、驚きました。まさか真宮さんが……ウチの社長だったなんて」
――そう。結香たちがいるこの部屋は、社長室だった。
その圧倒的な存在感や立ち振る舞いなどから、彼が社会的地位の高い人物であろうことは予想していたが、まさか自社の社長だったなんて。
「あぁ。といっても、まだ完全に引き継いだわけではないんだ。社長は俺の実父にあたる人だが、持病の方がだいぶ進行していてね。今は治療に専念するために入院しているんだ。父が退院したら、正式に発表される予定だよ」
優雅は現社長の実の息子らしい。社長の持病が悪化したこととだいぶ高齢であることも考えて、優雅に社長の座を引き継ぐことが決まったようだ。
優雅は海外にある支社で支社長として働いていたようだが、会社を継ぐため一か月ほど前に海外から戻ってきたらしい。
斎藤静香は、元々は真宮の父親である現社長の秘書をしていたようだ。
引継ぎも兼ねて、しばらくの間は優雅の秘書として手助けしてくれるとのことだ。



