「……私は、洸樹とよりを戻すつもりはないよ」
「それって、あの男が好きだから?」
「……うん、それもある。それに、洸樹とまた付き合って、上手くやっていけるとは思えない」

 洸樹の目を見てはっきりと口にした結香に、何か言い返そうとした洸樹だったが、結局は開きかけた口を閉じた。

「……あっそ」
「うん。……でもね、あの時洸樹と付き合えて楽しかったのも、本当だから。……ありがとう」

 結香は笑う。その表情は晴れやかで、未練など一ミリもないことが伝わってくる。
 洸樹は乱暴な手つきで自身の頭を掻きながら、重たい溜息を吐き出した。

「はー、クッソ。……もっと早くに、連絡しといたら良かったわ」

 顔を上げた洸樹の顔は、少しだけ泣きそうにも見えた。だけど結香はあえて気づかない振りをして、洸樹に背を向けて歩き出す。

 最後に、先ほどまで優雅たちが立っていた方にチラリと視線を向けてみたが、二人の姿はすでに見えなくなっていた。