「なぁ、結香。……俺らさ、もう一回やり直さねぇ?」
そして、優雅たちを見つめていた結香の手を強引に引き寄せて、よりを戻さないかと持ち掛けてきた。
結香は驚いた。別れる前の二人は喧嘩ばかりしていたし、まさか洸樹の方から復縁を迫られるだなんて、予想もしていなかったから。
「よりを戻さないかって……どうして今更? 私たち、別れてからもう一年は経つのに」
「喧嘩別れみたいになったから連絡を取りづらかっただけで、俺はずっと結香のことを考えてた。だからこの前会えて、チャンスだと思ったんだよ」
「でも、また付き合ったとしても、同じことの繰り返しになるんじゃないの? 洸樹、私が香水とか匂い関連の話をすると、いっつも怒ってたし……」
「っ、それは! お前が他の男の使ってた香水がいい匂いだったとか、普通に褒めるからだろ……!」
「え? ……そうだった?」
「あぁ! そもそもの喧嘩の原因はお前だろ」
結香は特に意識していなかったが、つまり洸樹はやきもちを妬いていたらしい。結香に全面的に非があると言いたいようだ。
けれど、結香が他の男性の匂いを褒めたといっても、偶然すれ違った人からいい香りがしただとか、その程度のはずだ。怒らせるほどのことを言った覚えはない。
共通の知人である異性もほぼいないので、それで匂いを褒めて嫌な気持ちにさせてしまったこともないはず。
――それだけが破局の原因だとは思えなかった。



