「……そもそも私たち、とっくに別れてるよね? 別れてからこれまで、一切連絡だってとってなかったのに、どうして今になって連絡してくるの?」
「別にいいだろ。久しぶりに会えたから、話したいって思ったんだよ。……で、あの時一緒にいた男って、結局結香の何なんだよ。まさか本当に彼氏なわけじゃないよな?」
「……あのさ。私とあの人がどんな関係だろうと、洸樹には関係ないよね?」
「っ、お前、騙されてるって! アイツ、どう考えても胡散臭いし! 見るからに金持ちのボンボンって感じだったけど、遊びで近づいてきただけなんじゃねーの?」
「あの人は、そんな人じゃないから。それに、もしそうだったとしても、洸樹には関係ないことでしょ」
「はぁ? 俺はお前を心配してやってんだぞ!?」
口うるさい洸樹をあしらいながら駅に向かっていれば、前方に話の渦中の人物が立っていることに気づいた。
(あれは、真宮さんと……)
一緒にいるのは、今日喫茶店で優雅に話しかけてきた、綺麗な女性だった。
あれから今まで、ずっと一緒にいたのだろう。仕事関係の人、なのだろうけど……やはり結香の目には、並んでいる二人がすごくお似合いに見えて、胸が苦しくなってしまう。
何か話している二人は、結香に気づく様子もない。
女性が何か言うと、優雅が口許を掌で覆った。遠目だからはっきりとは分からないが、照れているように見える。
「アイツって……ほら、やっぱりな。俺の言った通りじゃん」
結香の視線の先を辿った洸樹は、俺の言ったことが正しかっただろうと、優越感に浸ったような顔をして鼻を鳴らす。



