甘い香りに引き寄せられて ~正体不明の彼は、会社の××でした~



「うん。私が重度の匂いフェチだってことは隠すことにしてるから、大丈夫だよ」
「そう? ならいいけど……結香って抜けてるところがあるから心配なのよね。いい匂いに出会ったら今みたいにすぐ反応して、ぽろっと口に出してそう」

 自信満々に言いきる結香を、美樹は胡乱な目で見つめる。

「まさか。さすがの私も、そんなうっかりはしないよ」

 結香は可笑しそうに笑った。そんなことをしたら、相手に引かれてしまうこと間違いなしだ。今は美樹が一緒だから口に出しただけで、一人ならば声を出すことは自重しているに決まっている。


 ――けれど、近い未来。
 美樹の心配が的中することになるだなんて。

 そしてその出会いが、結香の運命を大きく変えることになるだなんて。

 この時は知るはずもなかったのだ。