「いえ……今日は外で食べるか、コンビニで済まそうと思っていたんです。なので真宮さんに誘ってもらえて、嬉しかったです」
「それなら良かったよ。……白石さんは、あれから彼とは連絡をとっているのか?」
「え? 彼って……もしかして、元カレのことですか?」
「あぁ。あの時、ずいぶん仲が良さそうに見えたから」
そう話す優雅は、どことなく不機嫌そうな顔をしているように見える。
――数日前、優雅との別れ際に話しかけてきた元カレの洸樹は、困惑する結香を気にすることもなく無遠慮に話しかけてきた。
かと思えば、その視線は隣に立つ優雅に向けられ、不躾な視線を送り始める。
「アンタ、もしかして結香の彼氏?」
「ち、違うから! というかジロジロ見過ぎ! 失礼でしょ」
「はは、だよなぁ。結香にこんな色男の彼氏ができるわけないか」
ケラケラと笑った洸樹は、結香の頭に手を伸ばしてくる。けれどその手が届く前に、優雅によって宙で叩き落された。
「悪いが、彼女とはデート中なんだ。ここで失礼させてもらうよ」
「……は? デート? お前ら、付き合ってるわけじゃねーんだろ?」
「行こう、白石さん」
「え、っと、あの……」
優雅に手を繋がれた結香は、困惑しながらも、優雅に付いていった。
同じく困惑している洸樹をその場に残して。
そのままスマートに車まで誘導され、結局は家の近くのスーパーまで送り届けてもらったのだ。
洸樹とはもちろん、あれから会ってはいない。



