「――真宮さん! お疲れ様です」
「白石さんも、お疲れ様」
スマホと財布を手に、会社のすぐそばにある喫茶店に行けば、優雅は奥の方のボックス席に座っていた。届いていたメッセージは優雅からで、よければ一緒に昼食を食べないかというお誘いだったのだ。
連絡先は、数日前一緒に買い物に行った時に交換していた。あの日、無事に帰れたかと言う確認のメッセージに返信をしてから、一切やりとりはしていなかった。
だからこそ、メッセージの差出人が優雅だと分かった瞬間、言いようのない嬉しさが胸に広がった。
あれから社内で顔を合わせることもなかった。数日振りに会う優雅は相変わらず格好良くて、目が合った人を一瞬で虜にしてしまうような、圧倒的なオーラを放っている。
優雅の向かいに座った結香は、パスタのランチセットを注文することにした。けれど優雅が頼んだのは珈琲のおかわりだけだ。
「真宮さんは食べないんですか?」
「あぁ。実はこの後すぐに仕事の予定が入ってしまってね。ゆっくり食事をとる時間はなさそうなんだ。だけど、少しの時間でも白石さんと話したくて。急に呼び出してしまってすまなかった」
柔らかに微笑んでいる優雅は、今日もきっちりしたスーツに身を包んでいる。しかしよく見れば、その顔には疲れが滲んでいるようにも見えた。
もしかしたら仕事が忙しいのかもしれない。それでもこうして結香を誘ってくれた事実が嬉しくて、そわそわと落ち着かないような気持ちになる。



