「もう十三時を過ぎてしまったね。ずっと匂いを嗅いでいるのも疲れただろう? お昼を食べがてら、少し休憩しようか」
確かに、色々な香りを嗅ぎ過ぎて、ほんの少しだけ頭がくらくらしてきた。
百貨店を出た二人は、遅めのランチが食べられそうな店を探し、近場のカフェに入ることにした。
ちょうど席も空いていたので、すぐに座ることができた。結香はオムライスを、優雅はパスタを頼んで、先に届いたアイスコーヒーで喉を潤す。
「それにしても、さっきのお店にあったルームフレグランス、すっごくいい香りでしたよね! ホワイトブーケの香りを買っちゃいましたけど、月夜の香りシリーズも素敵だったなぁ……」
「遠慮しなくても、気になるものは俺が買ってプレゼントしたのに」
結香が迷っている品を優雅は平然と買ってくれようとしたのだが、もちろん断った。
優雅と一緒に過ごしてみて、その立ち振る舞いや言動から彼が経済力がある人だということは分かった。だからといって、自分の欲しいものまで買ってもらおうとは思わなかった。
昨晩には食事をご馳走してもらい、ホテルでも散々迷惑をかけたのだ。これ以上の迷惑はかけられない。



