「そうか、それはぜひ読んでみたい。どこにあるか教えてくれ」

「はい。でも私、少しでもカミル様と一緒にいたい。カミル様のことをもっと知りたい」

自分からカミルの胸の中に飛び込んだリーゼを、カミルも抱きしめた。

「俺もお前に俺のことを知って欲しい。今も一緒に見たいものがあって来たんだ」

「一緒に見たいもの?」

カミルに連れて行かれたのは城の天辺にあるドーム型の展望台だった。ベンチに寄り添って座った二人を青い満月の光が照らす。

「綺麗。こんなに青い月を見るのははじめて」

「だろ? ここから見る青い月が俺は一番好きなんだ。ここには俺しか立ち入れないようにしてある。俺専用の逃げ場所なんだ。幼い時からいつも辛い時や悲しい時、ここでこの月を一人で見ていた。そしてどれだけ探しても会えないお前を想う時も」

「カミル様……」

「この青い月の怜悧さが、見る者の心を見透かし浄化する」

「カミル様の瞳と同じですね」

「え?」

「とても美しいその青い瞳に見つめられると、自分の醜さが見透かされて恥ずかしくなって、顔を背けたくなってしまう」

カミルはリーゼに向き合うと左目の包帯を解いた。ブラックオパールの瞳が妖しく七色に光る。

「なぜまだ隠す? お前は美しい。もう隠さなくていい」

「今まで隠すのが当たり前だったから。でも今は、この瞳に感謝しているんです。この瞳のおかげでカミル様にまた会うことができたから」

リーゼの潤んだブラックオパールの瞳が青い月の光に照らされて、いつもとは違う輝きを放つ。カミルはリーゼの瞳を食い入るように見つめた。

「リーゼ……これからは必ず、俺がお前を護る」

「カミル様……」

カミルはリーゼにキスした。それは昨日よりもっと深くて甘くてとろけるようなキスだった。