「若い女だった。そういやあ、ケンプテン訛りだったな」

「何!? ケンプテン訛りだと!?」

「おいらはケンプテン大公国に出稼ぎに行ってたことがあるからわかるんだ。あの訛りはケンプテンの女だ」

カミルとザシャは互いの顔を見合わせた。

「イルメラ……?」

カミルは剣先を今度は木こりの額に押し当てて言った。

「俺の女を襲って本当なら殺してやりたいくらいだが、まだ生かしておく価値はありそうだ。これから俺の言うことはなんでも聞くか?」

「もちろんでさあ!」

「よし。連れて行け」

「ひいいいいいっ」

腰を抜かした木こりは騎士団に拘束されて連行されていった。

ザシャがカミルに尋ねる。

「どういうことだ? イルメラがリーゼを襲わせようとしたのか? リーゼがいなくなった時も嵐から帰って来た時も、あんなに泣いて心配してたのに」

「しかしこの森で俺が知る限り、ケンプテン訛りの女はリーゼとイルメラしかいない」

「でもなぜリーゼを襲わせようなんてしたんだ? 異母姉妹でも実の姉なのに」

「考えられるとしたら、俺をリーゼから奪おうとしたのかもしれない」

「何だって?」

「好きだと告白された」

「マジで!? もっと早く教えてくれよ」

「リーゼのことで頭が一杯だったから。イルメラのことなんて気にもかけていなかった」

「ほんと罪深い男なんだから。まあ昔からモテてきたから仕方ないけど。そういえば舞踏会でもイルメラは嬉しそうにカミルと踊っていたね。だからといって、リーゼを襲わせようとするなんて普通じゃないよ」

「そうとわかればリーゼが危ない! 大急ぎで城へ戻るぞ!」