戸惑ったリーゼの顔が赤くなると、カミルは笑ってリーゼの頭を撫でた。

「冗談だ。またあとで」

軽くリーゼの頬にキスするとカミルは部屋から出て行った。

キスされた頬に手を当てたまましばらくリーゼは呆然と立ち尽くし、昨日の夜のことを思い出した。

まさかカミルがあの時の狼の子だったなんて!

そして洞穴の中でカミルに告白されたことやキスされたこと。抱き締め合ったまま二人きりで眠ったことを思い出すと恥ずかしくなった。でもカミルの気持ちを知ることができて、カミルを近くに感じられて、嬉しくて幸せな気持ちで満たされていた。

風呂に入るためぼろぼろになったドレスを脱ごうとして引き裂かれた胸元を見た時、あの木こりのことを思い出して怖くなった。でも今は、カミルが傍にいてくれる。もうすべて忘れようと思った。

風呂に入り冷えた身体を温めて着替えを済ませると、フリッツが部屋にやってきた。

「心配したよ、リーゼ。本当に無事で良かった」

フリッツにハグされて少し身体を硬くしたリーゼにフリッツは気付いたようだった。

「昨日の夜、何があったの?」

リーゼは森で起きた出来事を話した。

「そっか、そんな大変な目に遭っていたんだね。かわいそうに」

フリッツはリーゼの頭を撫でた。

「カミル様とは?」

フリッツに目を見て聞かれると嘘はつけない。

「あのね、昔助けた狼の子が、カミル様だったの」