リーゼが中に入ると、テーブルの上の籠の中に木苺が山盛りになっている。

「さあ、どうぞ」

「こんなにたくさん! ありがとうございます!」

木こりからもらった木苺を籠に入れて礼を言い、小屋を出ていこうとしたリーゼのローブのフードを後ろから木こりが掴んだ。

「おっと、タダでは渡せねえぜ」

木こりは木板の床にリーゼを押し倒した。木苺が籠から転がっていく。

「何をするんですか!?」

「何をするかって? お嬢さんと遊ぶんだよ」

「何ですって!? きゃあああ!」

木こりはリーゼの上に覆いかぶさると、身体を触り服を脱がせようとした。窓の外は大雨となり雷も轟いている。

「嫌! やめて!」

リーゼは抵抗したが、普段から大木を切り倒している木こりの腕力には到底敵わない。木こりがリーゼのローブの前を開き、エプロンドレスの胸元部分の生地を引き裂いた時だった。

リーゼは片手でローブのポケットからヴェンデルガルトから貰った小瓶を取り出し、小瓶の蓋を親指で強く押し開けて中の液体を木こりの後頭部へとかけた。

「うわあああ!」

木こりは後頭部を抑えながら叫ぶと意識を失って、その場に倒れ込み動かなくなった。

リーゼは恐怖で立ち上がれないまま四つん這いで泣きながら、床に転がっている木苺を拾い集めて籠に入れた。そして何とか立ち上がると、木こりが目覚めないうちにと急いで小屋を飛び出した。

小屋の外はもう嵐が来ていた。激しい雨と雷が容赦なくリーゼを襲う。それでもとにかくこの場所から一刻も早く遠くへ行きたくて森の中を走り続けた。

激しい稲光がして視界が真っ白になり何も見えなくなった瞬間、頭上で怖ろしいほどの雷鳴が轟いて目の前の大木に落雷し、大木から炎が燃え上がった。

「きゃあああああ!」

リーゼは木苺の入った籠を落とし両手で耳を押さえて絶叫した。そして半狂乱に泣き叫びながら一心不乱に再び森の中を走りだした。