「フリッツのことが好きなんじゃないの？　いつも二人で楽しそうに話してるじゃない？」

「お互いに本が好きだからその話をしているだけよ」

「だって本当は、ブラックオパールの瞳なんかで生まれていなければあんたがフリッツと結婚できるはずだったんだもの。フリッツと結婚するあたしを恨んでるんじゃないかと思って」

「そんなことないわ、イルメラ。心から祝福しているのよ。私は呪われし子として生まれた存在。こうして生きていられるだけでも感謝しなければならないのだから」

「それならいいけど。そうだ、あたしの結婚式にはあんたも参列できるよう特別に、お父様とお母様に頼んであげる。あんたはそういう華やかな場所に出たことないから」

「ほんとに！？」

「もちろん、あたしの召使としてね」

「それでも嬉しいわ。たくさんの人に祝福される貴女を一緒にお祝いできるなんて」

「あくまでも召使としてよ。ドレスは自分で作って。木綿か麻の安い生地でね」

「わかったわ。私、人前でドレスなんて着るの初めて。ありがとう、イルメラ。ああ、どんなデザインにしようかしら。とても楽しみだわ」

リーゼが無邪気に喜んでいると、イルメラが神妙な顔つきで言ってきた。

「そうだわ、あんたにひとつ忠告しておこうと思って」

「忠告？」

「昨日ね、結婚式の準備で城下町に召使達を引き連れてお買い物に出掛けたの。そこでね、街の人々が怖ろしい噂をしているのを聞いたのよ」

「怖ろしい噂？」

「シュヴァルツヴァルトの正統管理者の一人である狼筋の男が、黒い森の支配者に捧げる生贄花嫁を探しているんですって」

「生贄花嫁！？」