ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

ラーラに断られたリーゼは、銀のトレイにパウンドケーキとブラックチェリーの紅茶を乗せてニクラスの部屋の前までやってきた。勇気を出して部屋の扉をノックすると、ニクラスの「入れ」という声が聞こえた。

「失礼します!」

部屋の中に入るとニクラスとカミルがソファーに座って話をしていた。タイミングが悪い時に来てしまったとリーゼが帰ろうとするとニクラスが怒鳴った。

「人間の薄汚い召使女が何の用だ!」

「ごめんなさいっ。ブランデー漬けのサクランボのパウンドケーキを焼いたらニクラス様が甘いものがお好きと聞いたので。お持ちしてしまいました」

「何? パウンドケーキだと? ふん、まあよい。ここに置いてみよ」

「はい」

テーブルの上にトレイを置いてケーキを切って二人に取り分け、ティーポットの紅茶をティーカップに淹れた。

「まさか、毒なぞ入れておらんだろうな?」

「い、入れてませんっ」

嫌味を言いながらもケーキを一口食べたニクラスは、そのまま最後まで残らず食べ切って紅茶を優雅に飲んでいる。驚いて顔を見合わせたカミルとリーゼは微笑み合った。

「これは本当にお前が作ったのか?」

「はい」

「ふん、召使だっただけはある。どうせ生贄になるまで毎日暇であろう、明日も作って持ってこい」

「はい! わかりました!」

嬉しくなったリーゼは元気に返事をするとペコリとお辞儀をして部屋を出て、明日作るケーキを考えるため再び厨房に戻った。

その夜は夕食会もなく自室でひとりで夕食を済ませたリーゼは、エプロンドレスに刺繍をしていた。やっていることは監禁塔にいた時と同じことなのに、なぜかいつもより悦びを感じていた。