「あ、えっと、ちょっとホームシックで」

「そうか。無理矢理連れて来たからな。寂しい思いをさせてすまない」

本当は監禁塔なんかより百倍カミルの城の方がいいのに。カミルに謝らせてしまってうしろめたい。

「でももう大丈夫です。森のみんなが励ましてくれたから」

「ならよかった」

カミルに笑顔を向けられて動物たちも嬉しそうだ。

「ちょうどいい。城に帰るついでに、俺が管理する森の案内をしよう」

カミルはリーゼを抱き上げて馬に乗せると自分もリーゼの後ろに飛び乗った。手綱を持ってゆっくりと馬を歩かせる。二人の後を動物たちがついてきた。

「カミル様は動物たちと話せるんですか?」

「話すというより感じている。会話ができるのは人の姿をしている獣筋だけだ」

「そうなんだ……私、カミル様のこと全然何も知らない」

リーゼの髪にうしろからカミルが唇を当てた。

「これから知っていけばいい。俺のすべてを……」

「えっ?」

カミルの意味有りげな言葉とスキンシップにはいつも戸惑ってしまう。カミルにとってはなんでもないことだろうに。

「お前に生贄花嫁の儀式の話をしておきたいんだが。聞いてくれるか?」

「はい。ぜひ、聞かせてください」

カミルは大きくひとつ息を吐くと、意を決したように口を開いた。

「ブラックオパールの瞳を持つお前が不吉な悪兆であり呪われし子であるならば、ヴォルフ家においてカミルの名を受け継ぐ俺もまた、呪われし子なのだ」

「えっ? カミル様が呪われし子!?」

驚くリーゼに、カミルは生贄花嫁の儀式の由来を粛々と話し出した。