心臓がズキリと痛む。リーゼは二人に見つからないよう咄嗟に扉の陰に隠れた。
「儀式は来月よ。やっと探し出して見つけた生贄に、今逃げられちゃ困るじゃない」
「そっか、そうだよね。あんなに美しいカミル様があんな子好きになるわけないもんね」
「そうよ。あんな子に比べたら私達の方がかわいいし。ああ、私も身分さえ違わなければ本気でカミル様に告白するのに」
「身分が違わなくても無理よ。カミル様は森中の女子の憧れの的なんだから。そう簡単には相手にされないわ」
「それもそうね。無事に生贄花嫁の儀式が終わったらカミル様、誰と本当の結婚をするのかしら」
「誰とも結婚なんてしてほしくない。ずっと私たちのアイドルでいてほしいわ」
リーゼはそっとその場を離れた。自室に戻る気になれずに広大な城の中を歩き回っていると城門を見つけた。ここに来てからはじめて城の外に出ると、黒い森の中を当所も無く進んで行った。
今まで幾度となく表からも裏からも悲しくなる言葉はたくさん聞いてきた。だからそんなことは慣れっこだったし、そんなに傷付くこともなくなっていた。
でもなぜ今はこんなにもあの穴熊筋の二人の会話がショックなのだろうと考えながら歩く。答えはすぐに出た。カミルが自分を大切にするのは生贄花嫁だからであって、好きになるわけなんてないという現実を突き立てられたからだ。
自分でも生贄花嫁だとはっきりわかっているし、大公が頼んでくれたからだとわかっているけれど、人からやさしくされたことがなかったリーゼにとってカミルのやさしさは素直に嬉しかった。
「儀式は来月よ。やっと探し出して見つけた生贄に、今逃げられちゃ困るじゃない」
「そっか、そうだよね。あんなに美しいカミル様があんな子好きになるわけないもんね」
「そうよ。あんな子に比べたら私達の方がかわいいし。ああ、私も身分さえ違わなければ本気でカミル様に告白するのに」
「身分が違わなくても無理よ。カミル様は森中の女子の憧れの的なんだから。そう簡単には相手にされないわ」
「それもそうね。無事に生贄花嫁の儀式が終わったらカミル様、誰と本当の結婚をするのかしら」
「誰とも結婚なんてしてほしくない。ずっと私たちのアイドルでいてほしいわ」
リーゼはそっとその場を離れた。自室に戻る気になれずに広大な城の中を歩き回っていると城門を見つけた。ここに来てからはじめて城の外に出ると、黒い森の中を当所も無く進んで行った。
今まで幾度となく表からも裏からも悲しくなる言葉はたくさん聞いてきた。だからそんなことは慣れっこだったし、そんなに傷付くこともなくなっていた。
でもなぜ今はこんなにもあの穴熊筋の二人の会話がショックなのだろうと考えながら歩く。答えはすぐに出た。カミルが自分を大切にするのは生贄花嫁だからであって、好きになるわけなんてないという現実を突き立てられたからだ。
自分でも生贄花嫁だとはっきりわかっているし、大公が頼んでくれたからだとわかっているけれど、人からやさしくされたことがなかったリーゼにとってカミルのやさしさは素直に嬉しかった。


