「さすがお母様。あたし、カミル様のお城に行ってきます。そして必ずカミル様をあたしのものにしてみせるわ」

「それでこそあたくしの娘。そうね、フリッツも連れていきなさい」

「フリッツを?」

「フリッツは貴女の許嫁。貴女がカミルと結婚したらこのケンプテン大公国を継承できなくなって困ることになる。貴女とカミルが接近すれば焦ってなんとしても貴女を手放そうとしないはず。カミルにはちょうどいい刺激になるはずよ」

「だといいけど。だって、フリッツはリーゼのことが好きだから……」

「それならそれでフリッツがリーゼを大公国に連れ戻して結婚すれば、貴女もカミルと結婚しやすくなるだけ。どちらに転んでもフリッツは使えるわ」

「本当にお母様って最高!」

イルメラはベルタに抱きついた。

「いい? 絶対に失敗だけはしないでね。必ずカミルを手に入れるのよ。そうすればもうこんな小さな国に用はないわ。もっと贅沢な生活ができるんだから。わかったわね?」

ベルタの威圧的で低い声にイルメラは力強く首を縦に振って頷いた。

その後イルメラはフリッツの部屋を訪れた。

「ねえ、フリッツ、正直に答えて」

「何? イルメラ。そんなにあらたまって」

「貴方、政略結婚だから仕方なくあたしの許嫁になっているけど本当は、あたしよりリーゼのことが好きなんでしょ?」

「何を急に言い出すかと思えば……」

「いいのよ、正直に答えて。もうわかっているから」

「……うん」

「それならあたしも正直な気持ちを言わなきゃね。あたしね、カミル様のことを好きになってしまったの」

「えっ?」

「だからね、あたし一番いい方法を考えたのよ」

「一番いい方法?」

「名付けて、リーゼ救出作戦!」

「救出作戦!?」