ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

シャンパンのせいなのか、紅く光り輝くルビーの反射のせいなのか。リーゼの両頬は紅く染まっていた。

ふと顔を上げるとカミルが切なそうに自分を見つめている。

「どうして? どうしてそんな風に見つめるの?」

「お前を、ずっと探してたから。ずっと、出会えるのを待っていたから」

「やっと見つけた生贄花嫁ですもんね」

無言のままカミルはリーゼの両肩に手を置いた。カミルの顔が近付いてきて唇がリーゼの唇に触れそうになる。

えっ!? ちょっと待って! それってもしかして!?

リーゼが慌てふためいた時、静寂を破るかのように部屋の扉の外から大きなくしゃみが聞こえてきた。

「ザシャめ」

困惑しているリーゼを他所にカミルが立ち上がって扉を開けると、気まずそうなザシャが立っていた。

「たまたま通りがかって……」

ザシャを一瞥するとカミルはリーゼの元に戻り、「おやすみ」と言って額に軽くキスをして出ていった。

リーゼは左手の薬指に嵌められた燃えるように輝く深紅のルビーの指輪を見つめた。

本当に黒い森の管理者の狼筋の男と婚約してしまった。黒い森の支配者の怒りを鎮める生贄花嫁として。

それに今日一日だけで何回カミルのキスを受けただろうか。いくら大公に頼まれたとはいえ、そこまでもしなくていいのに。

でも一番困惑しているのは自分の気持ちだった。

カミルの視線や声。抱き締められたりキスされたりカミルの行動すべてが心臓の鼓動を早くする。

カミルにとってはなんでもないようなことなのにまだドキドキが止まらない。こんな気持ちははじめてだ。自分は一体どうしてしまったのだろう?

クイーンサイズの広すぎるベッドに慣れないリーゼは、ベッドの一番端っこギリギリの床に落ちないところで布団をかぶり枕に顔を埋めた。

明日からはカミル様に惑わされずに生贄花嫁としての覚悟と行動を貫いて行こう! 

そう決意しながら監禁塔から出たはじめての世界で疲れていたのか、リーゼはすぐに深い眠りに就いた。