「お前たち、わざと入って来たな」

「だってねえ」

「ねえ」

顔を見合わせてザシャとフリッツがニヤニヤしている。

「二人とも、今日は来てくれてありがとう」

「カミルとリーゼの結婚式だもの。皆で祝わないとね」

「ね」

すっかりザシャとフリッツは仲良くなったみたいだ。

そんなザシャたちのうしろから「クークック」という笑い声が聞こえた。

「お婆さん! 来てくれたのね!」

姿を現したヴェンデルガルトはリーゼに真っ白なカサブランカのブーケを渡した。

「幸せになるんだよ」

「ありがとう、お婆さん……私が今幸せなのはお婆さんのおかげよ」

リーゼはヴェンデルガルトを抱きしめた。リーゼの背中をヴェンデルガルトがぽんぽんとやさしく叩いてやる。

「もう包帯は巻いていないんだね」

「もう隠す必要はないから。たとえブラックオパールの瞳でも、私はこの瞳を恥じることはしない。カミル様がこの瞳も愛してくれるから」

「なんだい、惚気(のろけ)か。そんなことは知らないさ」

二人を微笑ましく見ているカミルにヴェンデルガルトが言った。

「カミルの7代目、あんた、あの生贄花嫁の儀式のエンディングシナリオ、一体いくつ考えていたんだい?」

「さあな。グッドエンディングからバッドエンディングまで何通りもあるからな」

「ふん、裏の裏まで読んであたしもうまくそれに乗せられたわけだね。まあいいさ。あたしとカミル6世の悲願だった生贄花嫁の儀式を終焉させたこと、感謝するよ。リーゼを幸せにしておやり」

「ああ、わかった」

するとリーゼの父親のケンプテン大公も控室に入って来た。

「お父様!」