リーゼはカミルがイルメラの銃に撃たれ息途絶えた後に起きたすべての出来事を話した。

「そうか、すべて終わったんだな……」

安堵して天井を見上げたカミルにリーゼが微笑む。

「カミル様が生き返ってくれて、本当によかった」

カミルはそっと、リーゼを包帯が巻かれている自分の胸に引き寄せた。

「お前がドラゴンの心を動かして片鱗を手に入れてくれたんだな。また俺はお前に命を救ってもらった。それだけじゃない。お前はカミル1世から続いた呪われしカミルの名を解放してくれた。ヴォルフ家当主として心から感謝する。ありがとう」

「いいえ、私の命を救ってくれたのはカミル様です。何も言わずに、何も言えずに、すべてを背負って深い愛で包んでくれていた。想っていてくれた。これまでのカミル様の重圧を考えたら涙が止まらなくなる……」

「どうしてもお前を生贄花嫁にしたくなかった。だから自分の心に鞭打って嘘もついてたくさんお前を泣かせてしまった。本当に心が引き裂かれるように辛かった。どうか許してくれ……」

リーゼは首を横に振りながらカミルの顔を見つめた。カミルは優しく髪を撫でてくれた。

「カミル様の怪我が完全に回復するまで、私がお世話させていただきますね。何でもお申し付けください」

「じゃあ早速、ひとつ頼もうかな?」

「なんですか!? 着替えでもお食事でも何でもお手伝いします!」

カミルのためなら何でもやりたいリーゼは目を輝かした。

「キス……して……」

予想外の申し出に恥ずかしかったけれどリーゼはカミルの唇にそっとキスした。

「これで、いいですか?」

「足りない。もう一度、して」

リーゼがもう一度キスすると、カミルは唇を外さないまま強くリーゼを抱きしめた。

カミルの首に両手を回したリーゼは、もう二度とカミルから離れないと心に誓った。