ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

「まだそんなことを言うのかい? じゃあ、あたしがお前たちの本当の姿を見せてやろう」

いつの間にかベルタとイルメラの前に移動していたヴェンデルガルトは、二人の瞳に瓶に入った大量の薬品を勢いよくかけた。

「うぎゃああああ!!!」

目を押さえた二人の悲鳴が湖畔中に響き渡る。もがき苦しみ痛みに耐えながら開かれた二人の両目は、紅の月の光によって更に妖しく七色に輝くブラックオパールの瞳になっていた。

「おーのーれー。カミルの名を継ぐ者め! またしても我ら黒蛇筋の女を裏切ったな!」

その場にいた全員が身震いするほどの怖ろしい本性を遂に現したベルタに、カミルは表情ひとつ変えず冷たく言い放った。

「言い掛かりはよせ。自業自得だ」

ベルタとイルメラは大公の騎士団に羽交(はが)()めにされ捕えられた。

「無礼者! あたくしに触るな! その手を放せ!」

「助けて! お父様!」

泣き叫ぶイルメラから大公は顔を背けた。

「畜生! こんなところで死んでなるものか! イルメラ!」

「はい! お母様!」

二人はブラックオパールの瞳を妖しく光らせるとぬるりと蛇のように捕えている家臣たちの手から抜け出し、人間の足では追い付けないような速さで足音も立てずに走って逃げ出した。逃げながらイルメラは不意に立ち止まり、櫓の上にいるリーゼを振り返って叫んだ。

「すべてはリーゼのせいだ! お前さえいなければカミルと結婚できたのに! 死ね!」

イルメラはドレスのスカートの裾を捲りあげるとガーターベルトに隠していた拳銃を取り出して、リーゼの心臓目掛けて撃った。

「きゃあああああ!」

リーゼの悲鳴が森を(つんざ)く。

イルメラが撃った銃弾はリーゼを(かば)ったカミルの心臓に撃ち込まれていた。