ヴェンデルガルトが櫓の下のベルタとイルメラを指差した。

「どういうことだ?」

ドラゴンが尋ねる。

「そんなことは知らないさ。カミルの7代目はすべてを知っているけどね」

ヴェンデルガルトに促されたカミルは、重い口を開いた。

「……そこにいるベルタとイルメラいう母娘は、黒蛇筋の女だ。死の森の薬品で黒い瞳に見えるように変えているが、本当はブラックオパールの瞳を持っている」

「なんていうことを言うの!? 適当なことを言わないで!」

櫓の下からベルタが怒り叫んだが、カミルは一瞥して話を続けた。

「ベルタは自分が大公妃になるために、リーゼの出産時に母親である大公妃を毒殺した」

「……え? 今、なんて……言ったの? お母様が殺された?」

驚倒しそうになったリーゼをカミルが抱き留める。

「嘘よ! カミルはあたくしたちを陥れようとしている!」

叫ぶベルタを無視してカミルは話を続けた。

「リーゼの瞳に死の森の薬品をかけたのはマルゴットじゃない。ベルタだ。それも故意に。無事に生まれたリーゼをブラックオパールの瞳を持つ呪われし子として葬り去るために。しかし大公の慈悲でリーゼは生きて監禁塔に幽閉された」

「そんな……」

リーゼの顔が蒼白していく。

「ベルタは大公を誑かし大公妃の座に就くと、長年母娘で散々リーゼを虐げた。そして俺が生贄花嫁を探していると耳にすると城下町の市場にリーゼを行かせて、ブラックオパールの瞳であることを公衆の面前に晒させた。生贄花嫁にするために」

「ああ……じゃあ、あれはやっぱり偶然ではなかった……」

「それだけじゃない。あの嵐の夜、木苺を古井戸に捨てリーゼが森に行くよう仕向けた挙句、木こりに襲わせたのは……イルメラだ」