「とっても変わった味。だけどアルコール分が強いからかな、なんだかフラフラしてきちゃった……」

「もう酔っぱらったの? 仕方ないなあ」

フリッツは眠そうなリーゼを抱き抱えると、ベッドへ連れて行き寝かせた。

フリッツの顔がすぐ上にあってリーゼを真剣に見つめている。

「フリッツ?」

「僕のリーゼ……」

フリッツはリーゼにキスをした。次第に深いキスになったが意識が朦朧としてきて拒めない。でもカミルのそれとは違ってどこか他人事のようにリーゼは客観していた。

そのまま目を閉じてしまい動けないでいると、フリッツはリーゼの額にキスをして部屋から出て行った。

そのまま眠ってしまったようで、次に目を覚ましたのは午前5時を過ぎていた。

生贄花嫁の儀式はもう今日の夜だ。

本当はフリッツが来なければあのあと城を出てあの湖畔に向かうつもりだった。今すぐにでも城を出て街で馬車を拾わなければもう間に合わない。

ここまできたらドラゴンに直接会って、片鱗をくれるように頼むしかない!

それに新しく生贄花嫁になった娘のことも気になる。いざとなれば自分がその娘の代わりに生贄花嫁になればいい。カミルのためにドラゴンの片鱗を手に入れることができるならそれでいい!

リーゼはクローゼットから大切にしまっていたカミルが贈ってくれたウェディングドレスを取り出した。この頃が一番幸せだった。戻れるなら戻りたい。しかし嘆いてばかりはいられない。今できることをしなくては!

自分の命を何に使うか決めたリーゼは、監禁塔で幽閉されていた頃のメイド服に着替えると、ウェディングドレスをトランクに詰めた。そしてそっと部屋を出ると誰にも気付かれないよう城を出て、城下町へと走った。