「やっぱり! 私のせいで狼の姿に変えさせてしまったから心配だったんです……」

「それなら関係ないよ。少し疲れ気味でね。でも大したことないから大丈夫」

「そうですか……あの、私、本を読んで調べて狼の姿になった時に回復できる薬の元を作ってみたんです」

「ほんとに!?」

「ええ。ザシャ様からカミル様に渡していただけませんか?」

「それなら自分で渡してあげてよ」

「私では受け取ってもらえないかもしれないから。晩餐会が終わったら監禁塔の最上階で薬を用意して待っています。いつでもいいのでお時間がある時に取りに来てくれませんか?」

「うん、わかった」

「ありがとう! じゃあまたあとで!」

その後開かれた晩餐会は祝福に満ち溢れたものだった。次々とたくさんの人々から祝福の言葉を受けるカミルとイルメラに、リーゼが言葉をかける機会もないほどだった。仲睦まじいカミルとイルメラを見ているうちに、これならこのままカミルを忘れられる時が来るかもしれないと思った。

晩餐会が終わると監禁塔の最上階のかつての自室でザシャが来るのを待った。

小さな四角い窓から高く昇った十三夜月の光が零れてきた頃、重くて厚い鉄の扉をノックする音がした。ザシャが来たと思いリーゼは扉を開けた。

「カミル様!」

暗がりの中、立っていたのはカミルだった。

「どうしてカミル様が!?」

「ザシャから聞いた。俺のために薬を作ってくれたって。お前はいつも俺の想像を超えてくる」

カミルは部屋の中に入るとリーゼを静かに見つめた。キャンドルの灯りにゆらゆらと照らされている久しぶりに間近で見るその美しい顔に緊張してしまう。

「お身体大丈夫ですか? ごめんなさい、私のせいで……」

「気にするなと言ったろ。お前の方こそ元気だったか?」