ツンデレ当主の生贄花嫁になったら愛されすぎたので私は生贄になりたいんです!

左手の薬指から指輪を外してベンチの上に置いて自室に戻ろうとすると、展望台の入口にカミルが立っていた。

「カミル様! どうして!?」

「狼筋は耳が利くんだ。さっき、俺の部屋の前まで来てただろ? お前の足音がした」

「そっか、気付いてたんですね。こんな時間なのにまだ起きてたの?」

「もしかしたらお前が来るかもしれないと起きて待っていた。俺に話があるんだろ?」

リーゼはベンチに置いた指輪を取り上げるとカミルに差し出した。

「お返しします。もう私が持つべきものじゃないから」

無言でカミルは受け取った。

「ほらね、やっぱりあっさり受け取られちゃった。それが嫌だったから、それが怖かったから、会えなかったのに。どうして来たの!?」

今までにない強い口調のリーゼを、カミルは真っ直ぐに切なく青い瞳で見つめて言った。

「……会いたかったから」

「またそんなこと言って……そういう甘い言葉を言えば馬鹿な私なら喜ぶとでも思った?」

「違う。俺がお前に会いたかったんだ」

「じゃあ! じゃあなぜ私をフリッツと結婚させるの? なぜイルメラを花嫁候補として呼んだの? いつから? いつからイルメラのことが好きだったの!?」

カミルは唇を噛みしめたまま何も答えなかった。

「こんな仕打ちをするくらいなら、嘘でも私に好きなんて言わないでほしかった。何度もキスなんてしないでほしかった。生贄花嫁として地下牢にでも閉じ込めて冷たくしてくれればよかった。そしたらカミル様のことなんて……好きにならずに済んだのに!」