帰り道、ユイトはいつもより口数が多かった。

どうでもいい様な世間話や、大切な進路の話……色々、沢山。

話してる途中、ユイトは私と他の男の子が話しているのが嫌だ、と言った。


…そんなの無理だよ、って言った時、ユイトは何も喋らなかった。




ユイトの家の前に着いた。




「ユイト、また明日ね。」
「うん。…またね。」




くるり、と後ろを向いて歩き出そうとした。

その瞬間







ぶつり






という音。


お腹に冷たい異物の感覚。




数秒して焼けるような激痛が襲ってきた。




「っぁ゙……!?」




立っていられず、地面へ座り込む。痛みの箇所へ目を向ければ、血がシャツに滲み出しているところだった。
叫ぼうとしても、喉の奥がひゅうひゅうと音を立てるだけで何も言えない。

精一杯力を振り絞り、ユイトの方へ振り向くと、




私を刺したのであろう、血のべっとり着いたナイフを持って立っていた。





「な………ん、で……………」

「………リンネが悪いんだよ。」

「え……?」

「リンネはさ、いつも俺の知らない所で俺以外と話して俺以外と笑って俺以外と軽口叩いて俺以外に悩みも相談して俺以外の事を考えて俺以外の事も見て俺以外と同じ世界で生きてるでしょ?………そんなの、赦さない。」

「っは …… 、 ?」



ユイトが何を言っているのか、解らない。

私が好きなユイトは、普段は犬みたいで可愛くて、でもキメる所はちゃんとキメて、私を大切にしてくれる……優しい人なのに……。

こんなユイトなんて、知らない…!



「…あは♡リンネはどんな表情してても可愛いなぁ…♡」

「ッゥ゙ぁ………げほっ、」



濃い鉄の味。自分の唇から、血が垂れているのが解る。

そんな私を見て、ユイトは狂ったように笑いだしていた。



「…やっぱ、こんな可愛いリンネを他の奴等に見せるなんて…そんなの嫌だから……♡俺は間違って無かった。…リンネも俺だけでいいでしょ?」



嫌だ。怖い。痛い。痛い痛い痛い……っ、

なんで?どうしてこうなったの?

逃げなきゃ。なのに、…痛みで……もう意識が……、




「今回も…仕方無いよね」





——来世も俺と幸せになろう? ――




ユイトは笑顔でそう呟くと、私に向かってナイフを振り降ろした。