メリーでハッピーなトゥルーエンドを


 すっかり途方に暮れてしまい、どうにか絶やさないようにしていた希望の灯火(ともしび)も消えかかっていた。

「教えて欲しい。僕はどうすればいい……?」

「それを悪魔()に聞くのかよ」

 心底面白そうに声を上げて笑う彼の腕を、思わず強く掴んだ。
 赤くて深いその双眸(そうぼう)をまっすぐ捉える。

「頼むから! 分かるだろ、真剣に言ってるんだよ」

 そう告げると彼は意外そうに目を(しばたた)かせ、ややあって小さく息をついた。
 気だるげに黒い手袋をつけ直しながら口を開く。

「……死人が出る運命は変わらない」

 淡々とした口調はいつもとちがって、ぞくりとするような迫力を(はら)んでいた。

 つい怯むものの、次の瞬間には「ただし」と元通りの笑みがたたえられる。
 面白がるような、試すようなそれだ。

「俺としては、死ぬのは誰でも構わない。人数の帳尻さえ合えばな」

「……え?」

 思わぬ言葉だった。
 それなら、花菜が死ぬ必然性なんてどこにもない。

「マイナスはねぇけどプラスはありうるってことだ。分かるか?」

 それは恐らく、最初のシナリオで花菜が亡くなっているせいだろう。

 誰も死なないという結末はありえないけれど、人数以上の死人が出る可能性はある。

 つまり、花菜かほかの誰か、それに加えてまた別の誰か────最低でもひとり以上亡くなることは確定している。
 たぶん、それが悪魔の言う“帳尻合わせ”だ。

「……じゃあ、きみのさじ加減ってこと?」

「いや、それはちがう。俺はあくまで見届けるだけだ。運命だとか死だとかに干渉はできねぇ」

 何だかこの悪魔の立ち位置がますます分からなくなってきた。

 彼自身は積極的に介入してこない。
 死に向かう花菜を救うこともなければ、誰かを傷つけて殺すこともない。

 そのくせ、砂時計はくれるし助言もしてくれる。

 ────運命に抗おうとする人間を、本当にただ観察して面白がっているだけならそれでももう構わない。

 敵でも味方でもなく、僕らは利害関係で結ばれている。

 好きなだけ笑えばいい。
 せめて魂を差し出した甲斐があったと言えるエンディングを、死ぬ気で掴み取るしかないだろう。

 ふと、歩み寄ってきた悪魔の赤い瞳がきらめく。

「どうすればいいか、って聞いたな。知ればいいんだよ」

「知、る……?」

「迷うのは知らねぇからだ。おまえはカナを守ろうと必死になりすぎて、周りがなーんにも見えてねぇ。あいつを取り巻く“今日”の変化も、そもそものシナリオも」