メリーでハッピーなトゥルーエンドを


 どきりと心臓が跳ねる。
 まるで心でも読まれたみたいだ。

 砂時計があれば僕次第で運命を変えられる?

 もし、本当なら。
 花菜を救える可能性がほんのわずかにでもあるのなら────。

「どうする? その女、魂を売ってでも助けるか?」

「……助けたい」

 この際、悪魔に魂を捧げたって、僕の命と引き換えになったって構わない。
 彼女がいない世界をひとりで生きていくくらいなら、身を滅ぼしてでも一縷(いちる)の希望に懸けたい。

 怯んだところで、選択肢なんてはじめからひとつしかなかった。

 僕の答えを聞いた悪魔はにやりと笑い、満足気に頷く。

「そう来なくちゃな。これは面白ぇことになってきた」



     ◇



 一瞬、意識が飛んだような感覚があって、ふと我に返ると朝の昇降口に立っていた。
 登校してきた生徒たちが左右からすり抜けていく。

「……?」

 あれは白昼夢か、予知夢だったんだろうか。
 花菜が線路に落ちて死んでしまう、そんなばかげた悪い夢を見ただけ?

 不思議な気分に陥りながら靴箱の方に目を向けたとき、そこに見慣れた姿を捉えた。

 華奢(きゃしゃ)で小柄なのにひときわ存在感のある彼女。
 たぶん僕の中にある感情が、彼女を光でふちどるからそう感じるんだろうけれど。

(やっぱり夢だったんだ)

 思わずほっとしながら歩み寄っていった。

「おはよう、花菜。早いね」

「あ、おはよ。英語の宿題終わってなくてさ」

 肩をすくめつつ歩き出した彼女の横に並んで教室へ向かう。

「じゃあ僕のノート見る?」

「え、いいの? あ……ううん、でも大丈夫。できるところまでやってみる。けど、どうしても間に合わなそうだったら頼らせて」

「もちろん。……偉いね」

 こういうまっすぐで素直で一生懸命なところが、すごく眩しく感じられる。
 それと同時にどうしようもなく惹かれる理由のひとつなんだと思う。

 気づいたら足を止めていて、彼女が驚いたようにこちらを見上げていて、僕もびっくりした。
 手が勝手に花菜の頭に触れていた。
 完全に無意識だ。

「あ、ごめん。……つい」

 慌てて引っ込める。
 つい、なんて正直に言わなくてもよかったのに、今度は言葉が勝手に口をついた。