「ここからがますます見ものだな。さて……“今日”はどうする?」
わたしの困惑を知っていながら、彼が必要以上に何か言うことはなかった。
ただ愉快そうに笑っている様は、まさに悪魔。
わたしは詰めきった息を吐き出してうつむいた。
「……ちょっと、もう少し考えてみる。頭が混乱してて、理解が追いつかない」
考えを整理して、選択を間違わないようにしないと。
分岐点を正しく見極めて、今回こそはバッドエンドを避けなくちゃならない。
(わたしを殺したいのは、真白先輩なの?)
廊下を歩きながら悶々と考えた。
てっきり、わたしはあの子、玲ちゃんに狙われているのだと思っていたけれど、それだけじゃないのかもしれない。
“昨日”は彼女も亡くなっていて、わたしも殺された。
少なくとも真白先輩はあのとき、わたしにためらいのない殺意を向けてきた。
『彼には会わせないって言った』
彼女も彼女で柊先輩に執着していたようだったし、最初に推測した“嫉妬”という動機は、むしろ真白先輩の方にあてはまる可能性が出てきた。
玲ちゃんを殺したのも彼女かもしれない。
(人間に恋をした“人じゃない何か”が暴走してる、とか。柊先輩と結ばれるためなら手段も選ばない……みたいな、そういう話?)
展開が変わったのはどうしてだろう。
御影の言っていたような“たちの悪い存在”が、悪魔みたいに特別な力を使える何かを指すなら、それも真白先輩の仕業かも。
わたしを妨害することが目的?
タイムリープのことも知っているのかな。
(だから、あんなにためらいもなく……?)
わけが分からなくなってきた。
一筋縄じゃいかないのは確かだけれど、それにしたってあまりに奇妙だ。
“今日”も展開が変わったらどうしよう。
もう郁実を救うどころじゃなく、置いてけぼりにされないようついていくのでいっぱいいっぱいだった。
そうやって翻弄されているうちにまた命を落とすかもしれない。
自分のために砂時計を使っている場合じゃないのに。
(何かを変えなきゃいけない)
このままじゃだめだ。
郁実のそばにいて、彼から目を離さないようにしても、もう延命にすらならない可能性がある。
ほかの誰かじゃなく、わたし自身がシナリオを変えないと。
時間がない。
「花菜ちゃん」



