例のショートカットの女の子。
“昨日”、ホームからわたしを突き落としたあの子にちがいない。
教卓の下に隠れるように────というか、隠すように押し込まれたみたい。
固く目を閉じたままぐったりとしている。
「どうしたの? ねぇ、大丈夫?」
彼女に対する恐怖も忘れ、気づいたら必死で呼びかけていた。
いったい、何が起きているの?
どう考えても尋常じゃない。
いくら声をかけても、揺すってみても、目を覚ますどころか身じろぎひとつしなかった。
(息、してる……?)
鼻や口のあたりに耳を寄せてみるけれど、焦る自分の鼓動が邪魔でよく分からない。
ひとまず襟を緩めてあげようとブラウスのボタンをひとつ外したとき、ぞくりと背筋が凍りついた。
「何これ」
彼女の首に、巻きつくような手の痕が残っていた。
痣みたいくっきりしていることからして、首を絞められたのだとひと目で分かる。
それも、かなりの力で。
(殺、され……た?)
ぱっと弾かれたように手を引っ込め、慌てて立ち上がった。
足元から這い上がってきた恐ろしさから逃れるようにあとずさる。
ばくばく強く打つ心臓が苦しい。
「……っ」
あまりの恐怖と混乱で悲鳴すら上げられないまま、きびすを返して教室を飛び出した。
(どういうこと? どういうこと……!?)
何がどうなっているんだろう。
どうして、あの子が死んでいるの?
誰に殺されたの?
まるでわけが分からなくて、ふらふらとおぼつかない足取りでさまよっていると、ふいに何かとぶつかった。
ぶつかったというより、軽く当たった。
「……花菜。何かあった?」
抱きとめるみたいに肩に手を添えてくれたのは郁実だった。
首を傾げる仕草はいつもと変わらない。
変わらないけれど、何か変────。
(あれ……)
ここ、どこ?
周りが見えていない間に昇降口へたどり着いたのかと思ったけれど、2階の階段を下りてもいなかった。
待っていて欲しいと伝えたのに、どうしてここにいるんだろう。
訝しげに彼を見上げたまま動けなくなる。
「……い。玲、いる?」
ふと、そんな声が耳に届いてはっと我に返る。
柊先輩だ、と思ったときには振り向いて足を踏み出していた。
「え、花菜……ちょっと待って」
呼び止める郁実の手をするりと抜けて振りきり、階段から廊下の方へ引き返す。
忙しなくあたりを見回す先輩が見えた。
誰かを捜しているみたい。
「柊先輩!」



