メリーでハッピーなトゥルーエンドを

     ◇



 放課後、郁実とともに学校を出る。
 思考を埋め尽くすほど、頭の中で御影の言葉が絶えずぐるぐる渦巻いていた。

(“運命を変える”なんてどうすれば……)

 ちょっとやそっとねじ曲げたところで、すぐにその反動を受ける羽目になると痛感した。

 その場をしのいでも、次の瞬間には強制的に()()されてしまう。
 郁実が必ず命を落とすように。

 いったい、わたしに何ができるんだろう。
 決まりきった“今日”のシナリオを壊す鍵は何だろう?

「……花菜? 何か考えごと?」

「あ……ううん、何でもないの。気にしないで」

 ふと我に返ると、曖昧な笑顔で誤魔化す。
 顔を上げた拍子に、例の横断歩道が近づいていることに気づいた。

「待って、郁実。こっちから帰ろう」

 道を変えるだけじゃ郁実を救うことはできない。
 分かっていても、思わずそう言っていた。

 所詮はその場しのぎ。
 だけど、“延命”にはなる。

「僕はいいけど、大丈夫なの? 駅まで遠くなるよ」

「うん、大丈夫。それでいいの!」

 こくこくと頷いてから、はたと思い直す。

「あれ? ちがう……。だめだ、やっぱり近道しよう」

「え?」

「ねぇ、今日うちに来ない? 一緒にご飯食べようよ」

 彼の戸惑いに構わず、身を乗り出す勢いで続ける。

 家にさえ帰り着けば、命を危険に晒すような要因はぐっと減るような気がした。
 わたしが見張って、すべてのリスクを回避すればいい。

 何が起こるか分からない、危うい外になんていつまでもいないで、早く帰らなきゃいけなかったんだ。
 遠回りなんてしなくても、帰ってから一緒にいればいい。

「でも、いいの? そんな急に……迷惑じゃない?」

「もちろんだよ!」

 何なら泊まってもらって“今日”はもう郁実を外に出さないようにしよう。
 そう心に決めたものの、遠慮で押し切られないよう、声には出さず留めておいた。

「…………」

 目の届く範囲で見守るのは、御影に言わせればやっぱり無意味なのだろう。
 結末を、運命を変えることには繋がらない。

 けれど、延命という意味では確かに現実的で有効な手段と言えるはず。