「……先輩がどうしてそんなこと言うのか、わたしには分からないです」
「え?」
思いきって心のままに告げると、彼は驚いたように目を見張った。
「だって、わたしたちってただの“先輩と後輩”でしたよね。それだけだったのに、急にこんな……。それに、先輩はいつも別の子といるから」
これ以上あやふやなまま流されたくなくて、たまらずそんなことまで口走ってしまう。
さすがに動揺を見せるかと思ったものの、彼はなんてことないように「ああ」と頷いた。
「もしかして、真白さんのこと?」
「真白、さん?」
それが苗字なのか名前なのか、誰のことなのかも分からないで繰り返す。
先輩は柔らかく微笑みながら続けた。
「真白光莉さん。金髪の子なんだけど、目立つから花菜ちゃんも見覚えあるんじゃないかな」
「あ……」
あのお人形さんみたいな、白いカーディガンの似合う綺麗な女の子。
すぐに思い至った。
「あの子、転校生なんだ。たまたま隣の席になったから俺が色々と面倒見てる。それだけだよ」
そうだったんだ、と腑に落ちると、途端に恥ずかしくなってきた。
わたしはどの立場で何を気にしていたんだろう。
何も言えなくなってしまって、口を結んだままうつむく。
「……もしかして、やきもち?」
「えっ」
決してそうじゃない。
そうじゃないけれど、いずれにしても自意識過剰だった。
「ちがいます! でも、ごめんなさい。変なこと言って……」
「否定しなくてもいいのに。妬いてくれてたなら、むしろ俺は嬉しいよ」
「……もう、なに言ってるんですか」
「本気なんだけどなぁ」
先輩は笑っていたけれど、きっとそれが冗談なんかじゃないことはもう十分すぎるほど分かった。
真白先輩のことはそれとして、ならば先ほどの女の子が誰だったのかはもはや尋ねる気にもならない。
真っ当な説明をされて、またからかわれるに決まっているから。
(……そういえば)
同じ一日をたどっていながら、先輩との会い方は毎回ちがっていた。



