何を言っているんだろう?
訝しむように眉を寄せたとき、ふいに思い至った。
自覚していながら取り合わなかった、あの違和感────いまなら何となく分かる。
(……そうだ)
確定している“今日”の出来事は、郁実の死だけ。
その原因が事故とは限らないと、確かに気づいていたはずなのにどうして失念していたんだろう。
事故さえ避ければ彼を救えると思い込んで、わたしにはそれができると思い上がっていた。
何の確実性もない可能性を信じて賭けてしまった。
わたしの油断と過信が、この悲劇を招いたんだ。
“今日”で痛感した。
郁実が死に誘われていること。
どんなに不自然でありえない現象に見舞われてもおかしくないのだ。
何が引き金になるか分からないから、1秒たりとも気を抜けない。
肌が粟立ち、呼吸が震えた。
思っていたよりもずっと、彼を救うという使命は重い。
「だろ?」
御影は興がるように唇の端を持ち上げる。
やっぱり、これは彼の想定通りのようだった。
「……どうすればいいの」
計り知れない現実を目の前に、途方に暮れながら尋ねる。
わたしの双眸を捉えて離さないまま、御影は静かに言った。
「ものごとには必ず因果関係がある。“昨日”と“今日”で変わったことは? まさか、その変化がぜんぶ偶然だなんて暢気なこと考えてねぇよな」
何だか抽象的なもの言いだ。
その言葉は頭の中でもつれて絡まった。
「何が言いたいの……?」
「5回なんてあっという間だぞ。いいか? 本気で救いてぇなら、変化を見逃さねぇことだ」
それだけ告げると、さっと背を向けてしまう。
しばらくその背中を見つめながら、彼の不親切な助言をどうにかほどこうと考え込んだ。
そのとき、ふと御影が半分だけ振り返る。
「おい、早く巻き戻した方がいい。砂がぜんぶ落ちるぞ」



