会社では彼女に業務以外のことでは一切話しかけなかったし目もくれなかった。

でもこれでいい。会社では我慢して二人きりで会える時に思い切り楽しもう。

それにしても我ながらよくご褒美とかお仕置きデートなんて思いついたものだ。

デートプランを考えるだけで顔が緩んでしまう。

もう彼女が俺のことを忘れていようが気にならなくなっていた。

悔しいから自分からネタバラシはしないけれど。

でもそんなことで落ち込んでいるより、今を大事にして彼女との未来を構築する方が価値的だ。

彼女との未来……たとえば結婚とか!?

あれほど「結婚」の二文字から逃げていた俺が、彼女と結婚したいと思っているなんて! 

今まで元カノたちがこれ見よがしに結婚情報誌を部屋に置いていたり、カフェで一緒に読ませられたりする度に嫌悪感しか感じなかったのに。

もし彼女が結婚情報誌を俺に見せてきたらどうしよう!? 

嬉しすぎる! なんなら俺が買ってこようか?

いや待て、焦るな、早まるな。まだ気持ちをぶつけるのは時期尚早だ。

もっとお互い分かり合えて彼女が受け止めてくれるようになるまで待とう。

己の暴走を防ぐため、1回目のお仕置きデートはランチを食べて映画を見てお茶をしてという無難なプランにした。

いろいろ彼女と話をしていくうちに、お互いコーヒーを自分で豆から挽いてブラックで飲むのが好きだったりとか共通点で盛り上がるのが嬉しかった。

中でも彼女が好きな本を俺がすでに読んでいて感想を話すと、彼女の瞳がキラキラと輝いた。

それもその筈。

俺は忠犬の如く彼女が図書室便りでオススメしていた本をすべて読んできたのだから。

まあでも名目上はお仕置きデートだし、浮かれてばかりもいられない。

映画を見てカフェで感想をたくさん話しあったあと、一応お仕置きをした。

「で、俺のこと思い出せた?」

「それがまだ、思い出せてません」

「俺ってそんなに印象薄い男なんだ。よっぽど君のタイプじゃないってことだね」

「そんなことないです!」

「え?」

あれ? 軽い冗談のつもりだったのに強めに反論してきた……ってことは俺タイプってこと!?

嬉しくて照れそうになるがチョロい男と思われてもいけない。

わざと余裕ぶってからかうように彼女の顔を覗き込んだ。

「へえ、俺って君のタイプだったの?」