【十六夜月のラブレター another side】イケメンエリート営業部員入谷柊哉くんは拗らせすぎてる

無事に資料の作成を終えると課長が声をかけてきた。

USBのことには何も触れず他愛のないことを談笑していると、彼女が出勤してきた。

すぐに気付いたが敢えて無視する。

本当は飼い主大好きわんこのように今すぐにでも纏わり付きたいくらいだが、また無自覚イケメンだと怒られたくない。

それに、俺が接近すれば今回みたいに彼女を巻き込んでしまう。

彼女にも言ったように、俺達が会っていることはもう誰にも知られない方がいい。

これからはすべて二人だけの秘密にする。

二人だけの秘密? 

ああ! なんていい響きなんだ!!

午前中からクライアント先へ向かうと40名超の社員の前で新作建材のプレゼンをした。

俺の営業スタイルは口先でもなくその場凌ぎでもなくうちにもクライアントにも利益になるよう、商品を誠実かつ論理的に説明することを信条としている。

プレゼンはクライアントの重役達からの評判も良かった。いい仕事ができるとやはり嬉しい。

それに今日の大きなモチベーションのひとつは、彼女との打ち上げだ。

この前泣かせてしまったことを心から謝りたいから。

一緒にプレゼンに行った営業部長との飲み会を終えて帰宅すると、早速彼女にメッセージを送った。

(お疲れ。プレゼンうまくいったよ!)

(よかった! お疲れさまでした!)

(二人で打ち上げな。今週末はどう?)

(はい! 大丈夫です)

無事彼女と約束でき、週末の夜となった。

前みたいに待ち合わせ場所に早めに行く。一分一秒でも無駄にしたくない。早く会いたい。

人ごみの中、仕事の時と変わらない服装でやってくる彼女を見つけると笑顔で大きく手を振り続けた。

俺に気付いた彼女が笑顔で手を振り返してくれる。

こんな些細なことで幸せになれるなんて。

予約したのはネットで検索した洞窟のような内装のイタリアンレストランだ。