大変で、泣きたくなる日もあった。
けれど、それでも作り続けた。
あの頃のわたしは、確かに――輝いていた。
(……羨ましいな)
つぶやいて、自分でも少し笑ってしまう。
あの頃の自分を、羨ましいなんて思う日が来るとは思わなかった。
テーブルの上には、神城さんからもらった個展のチケットの半券。
光を受けて、銀の文字が静かにきらめく。
指先でそっとなぞると、心の奥で小さな音がした。
――もう一度、あの光に触れてみたい。
それが“絵”なのか、“ケーキ”なのかは、まだわからない。
ただ、どこかで、何かが少しずつ動き始めている気がした。
外では、風がやさしくカーテンを揺らしている。
その音を聞きながら、目を閉じた。
今日は、あまりにいろんなことがありすぎた。
けれど、不思議と――怖くはなかった。
(……あの光、忘れたくないな)
そう願いながら、わたしはそっと目を閉じた。



