話題を変えるように、芙美子さんが明るく手を叩いた。
「そうですね……今見てみますね……あ、最近また新しい投稿してますよ」
「どれ?どんな投稿?楽しみね」
「えっと……何のケーキを食べたかはわからないんですけど、“風が運ぶ静かなクローバーの味がした”って書いてあります」
「本当、独特な表現をする方よね。一度お会いしてみたいわ」
わたしも芙美子さんに「そうですね」と同意する。
でも、わたしの頭の中は例のことでいっぱいだった。
夜のアトリエには、灯りの下で乾きかけた絵の具の匂いが漂っていた。
キャンバスの前で筆を拭っていた煌が、ドアの音に気づいて顔を上げる。
「真白。おかえり」
「ただいま」
声は出せたけれど、いつもより少し弱かった。
煌はその変化をすぐに察したようで、椅子を回してこちらを見つめた。
「どうしたの?顔が、いつもより元気ない」



